NT倍率と裁定取引
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NT倍率とは、日経平均株価(N:225銘柄)と、TOPIX指数(T)の比のことを言う。
日経平均株価は、東証一部上場企業の中から225銘柄を選んだ平均値。
TOPIX指数は、東証一部上場企業の全銘柄の時価総額合計を指数化したもの。
日経平均株価の計算の元になっている225銘柄は、全てTOPIXの中に含まれるため、通常は似たような動きをすることが多い。
ところが日経平均が上がっているのに、TOPIXは下がっていたり、逆に日経平均が下がっているのに、TOPIXはプラスになっているようなこともたまに起こる。
これは日経平均株価の計算が平均値であるため、株価が高い値がさ株の騰落が、指数に大きく影響するからだ。
たとえば日経平均の値がさ株であるファーストリテイリング(ユニクロ)や、ファナックなどの株価が大幅マイナスだと、日経平均もマイナスになりやすい。
しかし同時に、時価総額の大きなTOYOTAや銀行株がプラスになっていると、TOPIX指数はプラスになったりするわけだ。
その結果、NT倍率は大きく動くわけだけれど、近頃はこれが急騰したり急落するようになった。
その大きな理由の一因は、ヘッジファンドなどによる裁定取引(さいていとりひき)だ。
裁定取引というのは、簡単に言うと、「日経平均先物」と「値がさ株」の売買を組み合わせたモノで、高い方を売って安い方を買う利ざや稼ぎだ。
日経平均の裁定取引のパターン
- 裁定買い…日経平均先物(25枚)を売って、225銘柄(約20万株)を買う
- 裁定売り…日経平均先物(25枚)を買って、225銘柄(約20万株)を売る
因みに、日経平均先物25枚が、225銘柄それぞれ1,000株ずつ(約20万株)と釣り合うらしい。
金額にすると、一単位、3億円から4億円の間くらいになる。
さて、外国人投資家が日経平均先物を買うと、現物株もそれに釣られて騰がる。
なぜ上がるかというと、先物価格と現物価格にギャップが生まれるため、その利ざやととるために、裁定買いが入るからだ。
つまり「先物を売って、現物株を買う」という動きが生まれるわけだね。
で、裁定買い残高が積み上がっていくと、どこかの地点で今度は逆方向に動き出す。
というのも先物取引というのは、限月(げんげつ)といって、決済する日が決まっているため、どこかで逆方向の売買をしないといけない仕組みだから。
現在の日経平均株価の場合、裁定買い残はおよそ2兆円から4兆円の範囲で動いている。
たいていは2.5兆円から3.5兆円のボックスで、裁定買い残高が3.5兆円を超えると、そろそろピークになると言うことらしい。
つまり、裁定買い残が3.5兆円を超えるくらいになると、反対売買が起こり、裁定買いが解消されて裁定売りが始まる。
それによって日経平均株価は大きく値下がりするわけだね。
ただし裁定買い残高なんて、1週間に一度しか発表されないので、裁定買い残が増えてるかどうかは、中々分からない。
代わりに指標となるのが、実はNT倍率だ。
つまりNT倍率が急騰する時は、海外投資家が先物を買っていて、裁定買い残も増えているのだ。
NT倍率は日経平均÷TOPIXで計算できるので、好きなタイミングで計算することが出来るし、推移を表示しているサイトもあるので、それを参考にするのも良いかも知れない。
NT倍率の推移と日経平均株価
※NT倍率 日経平均・TOPIX・JPX日経400 比較チャート